ある業界紙に載っていた記事を抜粋した現実の話しです。
ある製造業で営業職に就いていた大学時代のゼミ仲間が、 過剰なノルマを課せられ、それを達成できないことを理由に、 何度も密室で複数の上司に囲まれて退職願を出すよう迫られたそう です。違法な退職強要であると拒絶すると、 執拗なパワハラに遭って精神的に追い詰められ、その結果、 自殺したそうです。 親友の妻から手紙で詳細を知らされたAさんは、 深い悲しみに暮れるとともに、奮起して彼の分も懸命に生きなくてはならないと固い決意をしました。 彼を死に追いやった会社は憎くて憎くてたまらない。 東京に家を持っている私自身も、 理不尽な転勤を命ぜられ会社に煮えたぎる憎悪と怒りが胸中から離 れず、一時は狂気の入り口に立っていたような気がする。 落ち着いてゆっくり考えてみると、 恨みを溜めたままでは人は後ろ向きの人生しか残らないのではない か、前を向いて生きていくためには、 不本意な支社であろうと人と目を合わせることも苦痛ではあったも のの、 まずは顔を上げようと定期的に回る店舗ではお客さんをしっかりと みて、挨拶するよう努めてみました。すると、 いつの間にか自然とお客さんと笑顔で会話できる自分がいることに 気がついたんです。自分の仕事で喜んでくれる人がいる。 そのことが一番の働くモチベーションでもあり本当の自分の沸き上 がる喜びになっていることを認識したのです。 東京の自宅に戻った際、 妻にそれまでのいきさつをすべて打ち明け、 自分の苦悩を黙っていたことを謝罪しました。 妻は夫への理解不足を詫びるとともに、 支社への異動でやる気をなくしている夫を身近で見ているのがつら かった、と転勤に伴わなかった本音も明かしてくれたのです。 それから数ヵ月後、妻子は東京から居を移し、 同居生活が再開してから一年近くが経ちます。今の職場にいつまでいられるのか、 会社に勤務し続けられるのかは全く不明ながら上からの評価や出世競争にはもう関心がいかなくなっていま す。立派な会社員は卒業です。会社のために働くのではなく、 お客さんのために、そして家族と自分のために、 働くのだという思いを今、強くしています。
自分にとって会社とは何なんだろう。 会社自体が社員に不当な処遇を与える時代です。 かつてのように忠誠を誓ったり、 個人を犠牲にしてまで尽くしたりする存在ではなくなっていると思 います。ただ、現に働いていられる間は、 付かず離れず付き合っていかなければならない。最近、 会社と仕事は必ずしも密着したものではないんじゃないかと思うよ うになっています。会社は思い通りにはならないけれど、 仕事は100%会社に支配されるものでもないし、 自分のものさしで自己評価しながら前向きに取り組んでいけばいい 。少しでもいいから、 誰か人の役に立ったと実感できる働き方を続けられればいいと思っ ています。
上記の自殺なさった方の生き方は天動説です。 後者の方は四苦八苦して相当に悩まれたことでしょうが、 価値観を変えることで充実した地動説的な生き方をなさっておられ ます。時代がすぐに変わるわけではないので、 まだまだ後者の方も苦労があるかもしれませんが確実に楽になって くるものと推察致します。