先日ぼんやりとテレビを見ていたのです。はじめは何となくテレビ 画面を見ていただけでグラスの中の氷の溶け方のほうに意識がいっ ていたのです。なんだか知らないけどだんだんテレビ画面に目が奪 われてしまうのです。美容師を目指す50代の男性の話です。5回 も実技試験に落ちてしまってもやり続けているという方です。筆記 試験はすでにクリア。実技になると緊張緊張・・・。汗ダクダク、 手はブルブルで見るに見兼ねる有り様なのです。髪をとかすくしは 落とすし、ハサミを持てばこれもすぐに手から離れてしまっている のです。いざ髪を切ろうとすると髪をおさえる手は大きく震え髪で はなく自分の手を指してしまうほどのテクニシャン、まとめ髪を作 ろうとしてもピンを落としまくり、ようやくピンが手に取れてもウ ィックに挿したピンはアチコチ向いてセットはぐちゃぐちゃ・・・本人の弁 は緊張しちゃって・・・と苦笑いしていましたが、どこか清々しい 好青年のように見える方でした。この方の動機を聞いていると、施 設にいるお年寄り達は美容室に行きたくても行けない事情がありま す。そこで美容師の出前です。髪を切ってもらっている老女という かご婦人は、満面の笑顔です。もう20歳か30歳も若返ったよう な素敵な女性になっています。感動したというのです。サラリーマ ン生活にうんざりしていたのもあります。自分が何かをすることで 人様が喜んでくれるというのは2倍3倍の自分の喜びになるんだ・ ・・というのがきっかけだということでした。願いと現実はなかな か一致しないというのは、自分の半生で分かっている。 今はまるっきしヘタだけど人の目が気になるけど、理想とのギャップに悶々としてしまうけ ど、サラリーマンの頃よりワクワクな気持ちが続いていてギブアッ プなんて思いもしないということでした。このようなテレビを見て いて前回に書かせて頂いた方と重なってしまいました。プログラム 参加者の別の方からも言われていたということもあって、かつまた ご本人からは個人が特定されないなら中身を書いてもいいよという 了承もあるので少し解説してみたいと思います。思えば1990年 代においてポジティブ心理学が世界中に広がっていきました。 当然日本にも入ってきました。ネガティブを見ようとはしません。 ネガティブは悪いことだ隠すべきものだという風潮でした。そのた めに無理やり頑張ってポジティブな風情を纏うことが最先端の空気 のような時代でした。それがキツイということから、たら・・・れば娘が蔓延した のをあなたも記憶にありませんか。いじめの下地もここにあるよう に思います。安倍総理が「美しい国 日本」というように自分の都合の良いことは全面に出し、都合の悪 いことはなかったことにしてしまうというのもこれでしょうか。
本当は分かっていない理解していないけれど、それを表に出したな ら評価されない、人格否定されてしまうという恐怖から分かったふ りを理解しているというふりをしているうちに思い込みというか勘 違いというかそんな気になってしまっています。実は分かっていないけれど言えない、隠さないといけない、ごまか さないとヤバイということに生活も対人関係もなってしまうものの ようです。それを薄々感じてはいるものの、いくら金を払っている とはいえ第三者に指摘されるのは、覚悟ができていないと準備がで きていないとつらいというか傷ついてしまいます。私もそうですが自分を守る為に脳のメカニズムがそうであるように 本能的に自己防衛が働いてしまうものです。これがストレス学説に あるコルチゾールとかオキシトシンの働きです。傷つくのならやめてしまえ、逃げてしまえということでしょうか。 やめても逃げても逃げ切れない、どうにもこうにもこの山を越えな いと自分の本当に欲しいものは手に入らないのだと大方の方は気づ いてしまいます。そこでその気づきを邪魔してくれる面子やプライ ドなどにひっかってしまうのも自己防衛本能でしょうか。さてどう しようかというのが前回の方が2年間に渡りこちらのことを忘れた いのに忘れられず、こちらを思いっきり否定したとて憎んだって何 にも変わらない、自分の欲しいものが手に入らないということを認 識したものの、発想法を変えてしまえば活用できるではないか。さ て拒否されるか受容されるか分からないけれど・・・いってみよう ということで無くてもいい菓子折を盾にして足を運んできたら、 まるで何もなかったような顔して、久しぶりですね。お元気でしょうかにな ってしまったということなのです。よくある話のひとつなのかもし れません。